About Us

制作部 杉&吉野
PROFILE
制作部 杉&吉野
杉:主幹 2016年入社
吉野:2019年入社

対話型フィニッシャーの彩色哲学、集合知で高めるフィギュア品質とは

フィギュア制作の終盤で、彩色や塗装を手がけるフィニッシャー。原型やイラスト、仕様書に込められた意図を読み解き、立体としての説得力を持たせながら、ファンが思い描くキャラクター像にフィットする「色」に翻訳する──。その彩色見本は量産品の基準となり、世界中のユーザーの手元に届きます。

求められるのは、IPやキャラクターへの飽くなき愛情をはじめ、製造まで見据えた判断力と技術力。ただ、グッドスマイルカンパニー制作部彩色チームの仕事は、フィニッシャー一人の感覚で完結しません。原型師・企画部・製造部・ディレクターと対話を重ね、集合知で商品をブラッシュアップしていきます。その過程で磨かれる品質と、責任の先にあるやりがいを、主幹の杉健司さんと吉野展弘さんにお聞きしました。

制作工程の中で、彩色チームはどんな役割を担っていますか。

彩色チームは、フィギュアの塗装を手がける「フィニッシャー」の集団です。つくっているのは、お客様が購入を判断するための見本であり、工場で量産化する際の基準。フィギュアの魅力を活かすも殺すも、彩色次第なんですよね。商品の最終的なクオリティを決める工程を担う、大切なポジションだと感じています。

吉野

原型や仕様書を受け取ったら、まず企画の意図を読み取ります。このフィギュアでどういった世界観を表現するのか、量産化する際に注意すべきことは何か、彩色のプロとして自分はどう感じたか。それらを、原型師・企画部・ディレクターと擦り合わせながら「お客様に喜んでいただける正解」を探ります。好き勝手に塗ることはありません。

達成感のあった仕事をご紹介ください。

吉野

最近だと、イラストレーターのRellaさんとコラボレーションした「初音ミク Happy 16th Birthday Ver.」でしょうか。Rellaさんが描いてくださったのは、ミクさんが光に照らされている雰囲気のあるイラスト。でもこの逆光をそのまま立体化すれば、極端に暗くなってしまう箇所が出てきます。

どんな色を乗せるべきか、彩色の解釈や判断が問われる場面ですね。

吉野

この場合、ファンの手元に届いたことを考えながら頭の中で一度光の演出を取り除きました。かつ、16周年にミクさんの設定年齢が追いついた「16歳の誕生日」をテーマにしたイラストだったので、後ろに背負っている「創作の羽根」の解釈も、各部署と何度も話し合いを重ねながら精緻に再現しています。エメラルドグリーンがかったホワイトを施したのですが、髪の色や洋服と重複しないように心がけました。

自分は『ノーゲーム・ノーライフ』のゲーマー兄妹のうち、妹を手がけた「白 -榎宮祐 Art Works-」が印象に残っています。原作者・榎宮祐さんが刊行した画集の描き下ろし表紙イラストを立体化する際、イラストに描かれていない背面をどうするか、かなりこだわりました。

吉野

これ、イラストの「完全再現」にチャレンジした例でもありますよね!

そうですね。完全再現するにしても、IPやキャラクターを愛するファンやお客様のイメージとズレないことが大前提にあります。この場合、アニメーションで描かれている背面の髪色を参考にさせてもらいました。多くの方がご覧になっているアニメの白こそ、イメージの最大公約数ではないか、と考えまして。

彩色の責任について、どう受け止めていますか。

ファンの購買欲をかき立てる見本が、量産化する工場の「再現性」を奪ってはならない。だから工程はなるべく複雑にしすぎないよう努めています。かといってシンプルに徹した結果、キャラクターに対するお客様のイメージを損なっては本末転倒。「届いた商品が写真と異なる」と言われないよう、再現性のバランスをしっかり取ることも、フィニッシャーがまっとうすべき責任のひとつです。

吉野

責任は大きいですが、一人で背負っている感覚はありません。企画や原型師と話し合いながら一歩ずつ前に進むので、不安より「みんなでつくっている」という感覚を覚えますね。彩色のプロとして雑な仕事はできませんが、適切なプロセスを踏めば確実にゴールへ近づいていけます。

難しかった仕事はありますか。

吉野

思い入れの強いキャラクター(向坂環 20th Anniversary Ver.)を担当した時ですね。自分の中にある「タマ姉」のイメージと、ファンが求めるであろう雰囲気の折り合いがつかず、何度もやり直しました。本当はもっとスマートに進められたかもしれませんが、やれるところまでやった結果、納得できるものができた。量産時の再現性も考え、「この色だ」と決めた瞬間は忘れられません。

向坂環は、恋愛シミュレーションゲーム『ToHeart2』シリーズに登場するヒロインの一人。15年ぶりの立体化ということもあって、現代に蘇らせるならどんなアレンジを加えたらお客様に喜んでいただけるか。吉野はかなり迷っているように見受けられました。

吉野

タマ姉の表情やポーズは、ゲームの主人公=プレイヤーに向けられたもの。フィギュアの購入者はプレイヤーがほとんどなので、「令和のいまタマ姉のファンが喜ぶのは、どんな色だろう?」と考えました。そこで彼女がこちらを上目遣いでのぞき込んでいる表情から、赤やピンクとひと口に言っても数を増やしていろんな色を用いることに。

アップデートされた向坂環になりましたよね。当時は「時間の許す限り悩んでほしい」と思って、悩む吉野を見守っていました。好きだからこそ悩む。プロとして期限は守らなければなりませんが、その熱量は大事にしてほしいと思います。

グッドスマイルカンパニーで働くことで、どんな成長の実感が得られましたか。

吉野

一人で抱え込まず、集合知を活かせるようになったことでしょうか。体制が整った会社なので、キャラクターに詳しい人、デザインに強い人、造形を見抜く人……周囲に多様なプロフェッショナルが大勢います。よく知らないIPやキャラクターを手がけることになっても、自分で調べるより皆さんに聞いた方が早いほど。1聞けば10返ってくる環境で、フィニッシャーとして技術をどんどん上げていくことができます。

企画部・製造部など他部署の考えを直接聞けることも、彩色のプロとしての成長につながりました。自分はフリーランスのフィニッシャーとして活動していたこともあるのですが、一人でできることには限界があります。工程の一部を任されるだけでなく、他部署との対話を通じてフィギュア制作の全体観を養えた。グッスマに入社してよかった、と感じることのひとつです。

フィニッシャーを目指す人にメッセージをお願いします。

吉野

「お客様に喜んでいただける正解」を、自分が最初に出す。それが世の中に出て、ファンの手元に届く。責任は重いですが、それだけ感動も大きい仕事です。自分の経験や技術で誰かを笑顔にできる彩色のおもしろさを味わってほしいですね。

彩色チームのメンバーが一流のプロとして活躍できるよう育成するのも、私の役目です。フィニッシャーとして一人前になるまでマンツーマンで手厚く指導しますので、フィギュアが好きという熱量をお持ちの方は、ぜひグッスマで一緒に働きましょう!

取材:foriio